秋田県の詩碑


[1] あんべひでお/二ツ井町 きみまち阪

 あんべひでお「春雪」

こうしなければならないから
こうしているのだというふうに
自分の降りてゆく路を
大きな目玉をあけて確かめながら
雪はゆっくりしたおもいで降っているようだ



[2] 稲村容作/西仙北町強首

 稲村容作「雄物川べりに育つもの」

幾千年となく
俺達の祖先を、更に俺達を
身動きの出来ないまでにぎりぎりと縛り
はては獣の如くに堕落させた呪詛の鉄鎖にも
いま、小さな錆がある
その一つの錆が生む千万の錆が
やがて世界に広がる日を
俺達は思ふのだ。



[3] 井上高秋/秋田市茨島 秋田大橋

 井上高秋「たそがれ橋」

夕映えは
人びとを 影絵にして
橋の上を渡していく

急ぐ人 なぜかうつむく人
弾む足 なぜか重い足どり
人さまざまのかたち

(一連略)

だが 橋向こうには
別な時間と 風景とが
待ちうけてはいまいか

(三連略)

それでもなお 人には
たそがれの橋を
渡っていかねばならぬ時がある



[4] 井上狄庵/天王町 アキタパーク美術館(音楽碑)

 井上狄庵「雪のかたち」

しんしんと 雪が降り 雪が降る
まなこ閉じ 友を悼みて ふところ手

ばんばんと 雪が降り 雪が降る
まぎれなき 吹雪だまりの 道渡る

ぼたぼたと 雪が降り 雪が降る
まのあたり 逢うべくありて 手紙書く

さわっさわっと 雪が降り 雪が降る
雪払い 竜が玉吐く 春隣り



[5] 押切順三/羽後町元西

 押切順三「元西中学校校歌」

日本東北の元西の丘に
学びつのびる若いいのち。

峠 ふもと 馬音の流れ
天地はひろく わきたつ希望。

真理を求め 平和を築く
世代の気流はここからおこる。



[6] 北本哲三/秋田市太平

 北本哲三「健康なやつだけを」

塩水のなかに
ざらざらとそそぎこまれる種籾
かきまわすとよわい青籾や粃はうきあがる
そいつをすくいとってまたかきまわす
かきまわしてまたすくいとる
くりかえすたびごと
つぎつぎとうきあがってくるそいつら
笊をあげて、残ったやつを俵にうつす
こいつらは
やがてぞっくり白い芽を出すだろう
耕土に深く根をはるだろう
こやしをすって田いっぱいに繁茂するだろう
病菌がとびついても
風雨があっても
負けずに生長するだろう
陽がてればびろうどいろにかがやくだろう



[7] 佐々木久春/秋田市下新城

 佐々木久春「旅のシャンソン」

旅は
かなしい海をゆく舟
ゆれる波に
心をそえて
旅は
さびしい空をゆく鳥
ふるえる風に
身をまかせ
あゝきみ
あすの感傷に
うつくしくよそおい
きのうのハンカチを
すてよう
あのかもめゆく
空と海に



[8] 澤木隆子/男鹿市船川港門前

 澤木隆子「杉」

驚かず
怒らず
悔やまず

風吹けば風を受け
雪降れば雪をいただき
陽かがやけば光る

直ぐなる性よ
忘れられて卑下せず
久しき年輪を重ねて誇らず
しっかりと大地を抱く大いなる愛

斯くあらばやと仰ぐ
ふるさとの杉



[9] 竹内瑛二郎/秋田市土崎港 中島公園

 竹内瑛二郎「海鳴り」

海鳴りがきこえている
おれの生まれた港の
海だな
なんだか
ききおぼえのある
懐かしい声だな



[10] 千葉治平/田沢湖町大沢 田沢湖畔

 千葉治平「田沢湖」

靄森山なぜか
その名
優しけれ汝が頂に
雲を巻き濃き憂ひを吐く日
みづうみに風立ちて白鳥の
波はよするなり
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